地域特性と地域単位に着目したソーシャル・キャピタルの形成量の地域差に関する分析. 農村計画 学会誌, 30(Special_Issue), 345-350. 担当者 福島慎太郎, 吉川郷主, 西前出, & 小林愼太郎. (2011).
1.要約 地域や集団に形成された社会関係を表す概念として、ソーシャルキャピタル(以下SC とする)があります。SCには、①個人に帰属する立場②地域に帰属するたち場の2つ の立場があります。 これまでの論文でも、農村地域に置いてSCの地域内部の人に対する信頼と、地域外 の人に対する信頼には明らかに差があることなどが実証されてきました。しかし、地 域単位のSCを測定する、あるいは個人レベルで測定したSCを地域レベルで集計する際 の地域単位は、主に国や州、省、都道府県といった非常に大きな単位に限られていま した。そのため、市町村や集落、コミュニティといった小規模な地域単位に形成され るSCは、重要性は認識されてきたものの地域差を検討した研究はありません。そこ で、この論文では、小規模な単位の地域差について書かれています。 京都府北部の三つの村を対象に、2006年に全32685戸の20歳以上を対象に紙での質 問調査が行われました。そして、SCの中でも信頼に注目しています。地域内の信頼の 方が、一般的信頼よりも肯定的な回答をしていることがわかりました。地域外の住民 よりも、地域内の住民に対する信頼の方が高い傾向にあります。また、地域内信頼に 関して、「寄合の開催回数」や「寄合への参加世帯層」, 「地域資 源管理への参加世帯 層」といった,農業集落の慣行・制 度的な特性よりも, 「地勢」 「農業地域類型」 「集落 形態」 「農家戸数比率」といった,集落の現状を規定している 物理的な特性の方が,よ り大きな規定要因となっていることがわかりました。「地勢」においては、山間や渓 谷において肯定的な回答の割合が高くありました。「集落の主な形態」においては, 散 在集落で肯定的な回答をする人の割合が高く,密居集落で低く、続いて、「農家戸数比 率」においては、比率が高い地域で地域内信頼は高く、比率が低い地域では低いとい うことがわかりました。分析の結果から、地域類型とともに地域単位において、地域 内信頼には地域差が生じていることがわかりました。 一般的信頼は、個々人の特性として形成される性質を強く持つのに対して、地域内 信頼は個々人の特性に加えて, 地域の環境側の特性として人々の間に形成される性質 を強く持つと考えられました。そして、地域内信頼の維持・形成に関して、地域内の 慣行・制度的な面だけでなく、地域の集落形態や農家戸数割合、都市・農村といった物 理的な側面からもアプローチすることが可能であるといえます。一連のSCの効果に関 する実証研究の結果に基づいて、今後SCに関する地域計画を策定していくことが望ま れます。
2.感想 地域内外より、地域内の人の方を信頼するというのは、私自身そうなのでそのように 考える人も多いのではないかと思いました。それだけではなく、住んでいる地域(山 間や渓谷)などによっても、SCが変化していることがわかりました。私たちは、もう すぐ後川で全数調査を行います。後川地域の方々の、繋がりや信頼について考えてい きたいです。また、調査をすることで普段はなかなか聞くことができない、個人の後 川に対する思いも聞くことができると思います。地域の方の生の声をしっかり聞き取 って、今後私たちがどのように後川と関わっていくのか、地域の問題点は何か、自分 たちは何ができるのかをもう一度考えたいです。
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