貧困アクションラボ 『Agricultural information and extension services』 Abdul Latif Jameel Poverty Action Lab (J-PAL). 2018. "Improving extension services to increase smallholder productivity 関西学院大学経済学部 4 年 平山励
2019 年のノーベル経済学賞は誰でしょうか? 答えは、米マサチューセッツ工科大(MIT)教授のアビジット・バナジー氏とエステー ル・デュフロ氏、米ハーバード大教授のマイケル・クレマー氏の 3 氏です!授賞理由は貧 困アクションラボ(J-PAL)を中心として「世界的な貧困緩和への実験的アプローチ」を世 の中に広めたからです。具体的にどんなことしたのかというと、途上国の貧困削減政策の 評価に全面的に RCT アプローチを適用する基礎を作りました。 *RCT の説明は Appendix に示しておく 農業に関する情報及びその普及方法の答えとは 今回紹介する英語論文は、RCT の研究が集められている J-PAL から引っ張ってきまし た! この論文の論点として、開発途上国にて農業情報の普及とのそのサービス方法は、 pedagogical モデルという教育モデルを使うことにあるとしています。この論文の場合では 情報通信技術(ICT)を通して適切でタイムリーな情報を農家に直接届け、彼らの学習成 果に基づいて技術指導者を動かし、ソーシャルネットワークを活用することで情報を農家 さん全てに届けることとされています! なぜ農家さんに情報や技術を伝えることが難しいのか 農家は、新しい技術を評価し、最適な管理決定を行うために、多くの種類の情報を必要 とします。しかし、行動をすることは難しく、伝統的な普及では、生産者が生産過程を変 更するように説得することはできませんでした。特に、情報提供サービスとトレーニング プログラムは、適切な情報が適切なタイミングで農家に提供されるとは限りません。不適 切または非効率的な情報提供は、農家が新しい技術を評価する能力を妨害し、最終的には 収量と利益を低下させることも少なくありません。 伝統的な政府の農業支援プログラムやトレーニングや訪問などのトップダウンアプロー チの多くは、一般的な農業技術の伝達に焦点を当てています。ボトムアップアプローチで あれば、農家の野外学校のような場所で、農家が新しく持続可能な技術を採用するのを支 援しています。しかし、残念ながら両方とも多くの環境で農民による使用が少ないことが 確認されています。 論文サマリ そこで、J-PAL は発展途上国に住む農家に農業情報提供をするプログラムにおいて、 12 の RCT 評価を行いました。外部の農業支援政策にて、何が農家の決断力を上げ、新し いインプットとプラクティスをすることの促進に繋がるかが研究されました。その結果と して、大きく 3 つのアプローチが結論づけられました。 1) タイムリーかつ、提供先に合わせた情報を提供すること 2) 情報提供を促進する技術提供者のインセンティブ付けをシステムに組み込むこと 3) 情報の拡散を即す現地の社会的ネットワークを活用すること この結論の根拠を示す過去の RCT を使った先行研究 a 従来の農業支援は、農家の利益を最大化するのではなく、収穫量を最大化するこ とに焦点を合わせているため、部分的に使用率が低い場合がある b 農民が比較的情報を持たない新しい技術では、普及と情報提供サービスは、彼ら が技術の利点について学ぶのを助ける重要な役割を果たす c 情報は、先延ばしのような行動の偏りを克服すること、そして以前は無視してい たことの重要性を強調するのに役立つため、農家さんはさらに恩恵を受ける可能 性があること d 新しいプラクティスを簡素化するツールを農家に提供することで、支援の有効性 を上げることができる e 情報通信技術を用い、農業サイクル中の関連する時期に農家のニーズに合わせて 推奨事項を調整することで、伝統的な農業支援を改善できる f 農家は、誰からの情報かによって異なる反応を示す。そのため、新しい技術を誰 に使わせて周りに伝えていくか(誰を messenger にして、どう素早くシステマチ ックに情報拡散するか)が重要である g インセンティブが与えられるとトレーナー(技術指導者)は、プログラムにて農家 の技術採用率を改善する可能性が高くなる。 Appendix RCT は「無作為化比較実験」「ランダム化比較試験」、あるいは「社会実験的政策評価」 と表現される。R は評価したい政策の有無ないしは比較したい複数の政策のどれかをラン ダムに割り振ることからとった頭文字、C は結果に影響しそうな諸要因をコントロールし た環境を作ることを意味する頭文字、T はトライアルの頭文字だ。 政策の効果を正しく測るには、医学の新薬試験と同じ方法を使えばよい。新薬の効果を測 りたい患者を無作為に「治験群」と「対照群」に割り振り、前者にのみ新薬を施し、2 つ の患者群の治癒状況に違いが生じるかを統計的に検定する。 これに近い実験を設計するのが、社会科学における RCT だ。潜在的な政策介入のターゲ ットの一部を実験対象とし、治験群と対照群を無作為に割り振り、前者にのみ政策介入を 施し後者には実施せず、介入後に経済的な変数に違いが生じるかを統計的に検定する。無 作為化が適切なら政策介入の効果が正確にわかる。 参考文献 Beaman, Lori, Ariel BenYishay, Jeremy Magruder, and Ahmed Mushfiq Mobarak. “Can Network Theory-based Targeting Increase Technology Adoption?” Working paper, June 2015. 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