『地域活性化と観光ビジネス ~温泉地を一例に~』 いわき明星大学研究紀要 人文学・社会科 学・情報学篇 担当者 大嶋淳俊
1.要約 この論文では地域連携型PBL教育の課題と展望について書かれている。取り上げられ ているのは温泉地である。いわき明星大学の大学生が「いわき湯本温泉」を舞台に行 政や産業界の協力、支援を得ながら観光コンテンツやPV制作など具体的な成果の創出 を目指して授業・プロジェクトを実施している。 温泉地の活性化にはシニア層だけでなく若者やインバウンドの来訪増加が極めて重要 であり、草津温泉や城崎温泉などのような活気にはまだまだ程遠い。やはり福島県の 原発のイメージがあり、インバウンドを取り込むのには時間がかかる。東京から特急 で約2時間かかる福島に、首都圏の若者を呼び込むことが重要な課題。 地域連携型PBL教育を実施する上での課題としては2つある。 一つ目は「学生と温泉地の接点が乏しい」ということ。この地に来る若者のほとんど は近隣のスパリゾートハワイアンズで遊ぶことを目的に、湯本温泉を安い宿泊費目当 てに利用していた。 二つ目は「地元の魅力再発見や課題解決への関心が弱い」ということ。このプロジェ クトに所属する二十数名の地元の学生ですら湯本温泉で遊んだことがほぼ皆無であっ た。 以上を踏まえ目標を以下の三点に定めた。 一つ目が「学生の意識変化と地域との連携促進」、二つ目が「地域連携型PBL教育に よる学びと実践力の向上」、三つ目が「見える成果の創出」である。PBL教育の場 合、提案を地域に提示して終了というものが非常に多い。ただしそれは学生達にとっ ては達成感が乏しく、地域にとっても「おつきあい」に終わる。実際に提案内容を実 施してみたり、提案書のみならず動画などを制作して次の世代の人々にも分かりやす いコンテンツを作ってみるのである。 実際に、「魅力スポット」巡りをストーリー化した温泉地PR動画を制作してYouTube で公開した。このPR動画が話題となり新聞等にも取り上げられ、いわき湯本温泉のウ ェブサイトに継続的に掲載されている。 一方で課題としては動画の脚本、撮影、編集などを学生だけでなく教員が相当加入し ないと いけないこと。また地元有名ガイドに教えていただいた内容が中心であり、学生独自 で魅力を発掘したとは言いがたいこと。 それらの反省を経て翌年では①全員が各自のスマートフォンを使って静止画やミニ動 画の撮影を行い、それを統合して一つのウェブサイトに整理して掲載すること、②同 時に「若者向け旅行プラン」の作成を実施した。 結果としては完成品とは程遠いものだったがこの2年間で地域連携及び産官学連携の 素地は作られてきたと言える。 地域の活性化と教育成果の向上の両面から「目に見える成果」の創出を継続すること が望まれる。
2.感想 PBL教育でフィールドワークやレクチャーなどをやっているが、あくまで授業の一環 であり受け身であることが目標未達に終わった最大の原因であると考える。一方で自 分達のようなよそ者の大学生でもまだまだ地域に貢献できる余白があると感じた。い や、むしろよそ者の大学生だからこそ価値を提供できるところがある。それはもちろ ん、自分達が住民の方々と密に連携し、役割分担を果たしてこそ効果が出る。私は特 に地元の若者たちと自分達のようなよそ者の大学生がキーになるのでないかと思う。 今自分達にできることはツアーの実施や大学での生協祭及び学祭における認知向上、 PR動画の作成など、たたき台を作り小さく「見える成果」を生み出すことである。本 文にも出てきたが、PR動画が話題となり新聞等にも取り上げられていたし、特に「全 員が各自のスマートフォンを使って静止画やミニ動画の撮影をし統合して一つのウェ ブサイトに整理して掲載」など取り組みは自分達の活動でも活用できそうだと感じ た。デジタルネイティブである自分達の貢献の仕方はいくらでもある。重要なのはST Pを行い「一次的に行うのではなく、継続して続けていくこと」だろう。
Comments