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執筆者の写真agritanogyo

2020.1 書籍

『フルサトをつくる』ちくま文庫 著者 伊藤洋志

1.要約 「大きな失敗をしたりトラブルに遭ってもそこに行けば何とか生きられる」という場所を作 っておくことは生きるにおいてかなりの心の余裕を生む。そんな場所をつくるためにどういう ことをするのかを書いた本です! 第 1 章 フルサトの見つけ方 ◎人の縁をたどっていこう ・たくさんの土地を訪れて知り合いを増やしていけば、そのうち自分が行きやすそうな場所が 見えてくる。こういった場所を作るのは、知り合いだと動きにくく、しがらみのないよそ者の 方が動けるから ◎選ぶうえでの重要ポイント ①人 そこにいると安心できる人間関係のネットワーク ②環境 定期的に通いたくなるコンテンツ:毎日日替わりでいろんな温泉が楽しめるとか ③交通 都会との往復のしやすさ ※ただ遠ければ軽い気持ちで来る人が減って面白い人や思い入れの強い人が集まる ◎定期的に人がその場所に集まるようにする方法 ①田舎で継続的にやることを持つ ex.平日都会で仕事して週末田舎で畑をやる、時々通ってその土地の伝統工芸を学ぶ、田舎で ときどきワークショップする、セカンド仕事場にする ②定住している人との交流を持つ 単にお客さんとしていくのではなく、一緒に何かすることで本当に仲良くなれる。何も特技が なくても常に田舎は人手不足だからいるだけで手伝えることはある。 都会から何か持って行ったり、都会の情報集めたり、都会と田舎を往復する人間だからこそ貢 献できることがあるはず。 第 2 章 「住む」をつくる ◎空き家活用における問題 ①持ち主に貸し出す意欲がない ②よそ者アレルギー 小さいイベントを開催して招く、こちらも地域イベントに参加して実際に会って話している様 子を見せて「まあ困ったことにはならなさそう」と安心しているのを見せる 小さい具体例を示すこと ③仏壇問題 手入れすることを条件に借りてみる ④持ち主が空き家を無価値だと思い込んでいる 補修で住めるかも?空き家の片づけは需要ありそう ⑤ごく稀に使うから貸せない 盆と正月だけ空ける条件を提案してみる ⑥見栄え、世間体問題 地域のためになるんだ、というプランの提案(地域の子供たちに勉強を教える、など) ◎DIY するときの勘所 ・まずやってみる ・1~2 人で全工程をやらない ・修繕の結果をマメに見えるようにしていく ・いろいろな素材と道具を知る ・1 人だけの作業をあまり作らない ・電動工具は練習してから使う ・素材選びに注力する ・改修は謎解きゲーム ・暑さ対策も工夫次第、祭りのネタにしてもいい ◎フルサトのきっかけづくり ・即答できる瞬発力 〇いいですね、面白そう、行ってみたい ・行き来する用事を作って連携する ※行き来の無理をできるだけなくす方法 ①移動自体を楽しむ ②大人数で移動する ③大都市間のバス移動は安い ④ついでに用事を済ませてしまう ⑤中継拠点を作る ◎フルサトを行き来する意義 普段の生活と異なる人や環境と接することで新しいものが生まれやすい 経済競争が激しく行われている世界から脱出できる場所を持つこと ➣この心の余裕が大事! 第 3 章 「つながり」を作る ◎地域に関わる人 ①ずっと住んでる地元の人 ②他から移住してきた人 ③ときどき遊びに来る人 継続的にやってきて、地元の人とある程度交流を持ち続けている ◎ゆるい流動性を作る ・田舎は人間関係が濃密でプライバシーがないけど、都会は人が多いので匿名的でいれる ➣いやいや、移住する人・ときどき遊びに来る人がいる。この「人の循環していること」が大 事。 ・ある程度オープンで人の流動性もあるけど、そこに帰れば知っている仲間がいつもいて安心 感を感じられるような場所。困ったときに数百万円の借金を立て替えてもらったりするほど密 な関係ではないけれど、疲れたときに数週間くらい都会を離れて避難させてもらえるようなく らいの親密な距離感。 オープンとクローズドの両方のよさをうまく組み合わせる ◎人の集め方 ・知人や友人を直接誘って集める ・2~3 か月に1回イベントを企画する。ワクワクするイベントを企画できれば多少行きにくく ても人は集まる。 ◎流れ 1回でいいから遊びに来てくれる人を増やす ↓ その人たちの中から何回も遊びに来てくれるリピーターを増やす ↓ 何%かは移住する ↓ 移住者がある程度集まって雰囲気のいいコミュニティが増えればまた新たな移住者が出る 第 4 章 「仕事」をつくる ◎仕事 土地の人との関係性を作る媒介になりえる、地域に無理のない形で参加できる手段、温泉代や 移動の交通費を作るため ◎フルサトの仕事 ➣都市と違ってマネーを最優先させなくてもよい 仕事をやるのは ①面白いから ②他者との関係をつくるため ③そのついでに生活の糧を得る ・儲かったら儲かったでラッキー、儲からなくても全然オッケーな体制を整備することがフル サトの仕事の秘訣 ex.飲食なら毎日食べられるものを作り、原料は過労にならない方法で自給する ・自給の延長線上にある仕事は向いている ・地方の人が東京に短期滞在できるとことかあれば面白い(よそ者に「ようわからんけど任せ るわ、責任はとるから」と言えるような人を作るために) ・生活を探求することが仕事になる!これまでの生活がいまいち機能しなくなっている、変え 時だ!ってことがあるので。 ・フルサトは競合というよりも「不在になった中華料理店をどう分担するか」といった感覚で 仕事が成立する ◎フルサトにおける仕事の作り方:足りないものを作っていく感覚 ・バーがないから週 2 日でも作ろう ・本屋がなければ週 2 日営業でもうやれないか、もし無理なら月 1 でいいから移動書店をや れないか ・2 拠点居住の場合、突発的な屋台をできないか ・「頼み事」を考える ◎経済は何かが交換されて循環すればいい 要らない車(廃車)を譲り受ける ➣もらう側は 0 円で手に入り、あげる側は廃車代を負担しなくてもよい上に熊野の家の滞在権 利をもらった 何か交換が起きる ↓ そこに関係性が生まれて次につながっていく ↓ 交換できたという事実だけで気分がいいし、ゲーム感覚みたいで面白い ↓ 「交換を活発化させることこそが経済の活性化」 ex.寺子屋で得意な教科だけ教える代わりに無料で泊まれて、空き時間に川遊びや花火、BBQ など夏らしい過ごし方ができる 地元の料理や農業を教えてもらうことで、お金は稼げなくても技が身につき生活の質が上がる カリスマに依存せず自分のアイデアでやってみよう! 第 5 章 「文化」をつくる ◎文化を作るなら田舎の方がいい ・場所のコストが安いから ・みんなで一緒に学ぼう、遊ぼうという感じでゆるく楽しみながら自分で作っていく ・田舎に行くほど人もイベントも少ないからこそ音楽好きの中でも、ロック、クラブなどそこ まで細分化されずに、人が混ざり合える。 これは選択肢の多すぎる都会にはない良さ 何もないところから手作りで始めて 1 つずつまちに必要なものを増やしていくのも面白い。 ↓ 文化をつくるというのは基本的に自分が楽しいと思うことをやればいい。仕事のようにきっち りやる必要もない。ゆるくて楽なもの。クオリティが高くなくてもそれを一緒に楽しめる仲間 さえいればなんでも楽しい。

2.感想 「都会がいいんだ」「地方創生だから地方だ」とどちらかに傾くのではなく、セカンドプレイ スを作ることが大事だということが分かりました!心がすさんだ時に帰れば知っている仲間が いて安心感を与えられる場所、しがらみにとらわれず新しい視点を生ませる場所。そんな場所 として田舎は最適なのだと思います。最前線に立って「頑張って結果を残す」ことだけにとら われず、生きることを楽しんでいける場所として自分も複数の土地に関わり、都会田舎を捨て ずに生きたいと思わせてくれる本でした!

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