日本農業の構造変容と地域農業の担い手 田林 明 経済地理学年報第 53 巻 2007 年 pp.3ʷ25
【要約】 現代の日本の農業は、国際的競合や環境問題、農業者の高齢化などの影響を受けて、厳しい 状況に置かれている。この報告は 20 世紀後半からの日本農業の変遷過程をまず検討し、現 代の日本農業が抱える課題を整理する。その中で最も深刻なものと考えられるのが農業の 担い手の育成であり、その可能性について考察されている。 1955 年の日本の総農家は 604.3 万戸であり、そのうちせんぎょうのうかは 210.5 万戸と農 業に強く依存する農家が多かった。1960 年代中頃から、農家に急速に兼業が浸透していっ た。2000 年には自給的農家と販売農家のうちの第 2 種兼業農家を合わせると全体の 75.1% になってしまった。 伝統的農業樹(1960 年代以前)における日本の農業は、水稲作を中心とする家族労働に基 盤を置いた自給的で小規模な経営として特徴づけられていた。20 世紀後半に顕著になって きた日本農業の様々な課題に取り組むために、1999 年 7 月にそれまでの農業基本法に代わ る「食料・農業・農村基本法」が制定された。 第 2 次世界大戦後の日本農業は、1970 年ごろと 1990 年ごろを境に大きく変化し、農業再 編期にある現在の農業は、環境問題や農業の担い手不足、コメの生産調整と米価の低迷、輸 入農産物との競合、自給率の低下、病気被害の大規模化・広域化、農村の弱体化など多くの 問題を抱えている。その理由としては、農地の流動化による規模拡大などが挙げられる。法 人化することで、人材確保、地権者に対する信用力の向上、課税対策などによるコスト低減 が狙われる。これからの農業を維持・発展させるには、経済活動としての農業を進める企業 的経営が不可欠である。
【感想】 これからの農業発展に向けて企業的経営が必要なことはよく謳われている。その中で、政策 を打ち出す側と、それを実際に受け入れる側に温度差が大きい。私たちにできることとして 近い距離の中で生の声を聴くことが理解への第一歩なのではないかと改めて感じた。
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