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執筆者の写真agritanogyo

2020.8 日本語論文

『「食のまちおこし」が示唆する地域活性化のヒント──地域資源の活用と複数セクター間の連携──』

上田道明

佛教大学社会学部論集 第 56 号2013 年 3 月

地域活性化が喫緊の課題となっているなか,経済に特化することなく総合的な目的が意識されなければならないという開発の目的の問題,開発は地域内の資源を土台にして,そこから生み出された付加価値を地域内に再投資していくという形での地域内連関が求められる,という開発の方法の問題。主体は地域の市民や企業,自治体などであるべきとする開発の担い手の問題,の 3 つである。地域資源の発見であり,それらを「誰が」「どのような目的のもと」「どのように(地域資源を)活用するか」ということになる。その意味で,話の起点となるのが「地域資源の発見」なのであるが,現在各地で注目されている地域資源の一つに,地域ならではの食材や名物料理といった「食」がある。食材の供給地としての地域特性を「食のまちおこし」,とりわけ「B 級ご当地グルメ」を手段とした取り組みが注目されている。

地域再生の取り組みの多くが挫折を見せるなか,なぜ「B 級ご当地グルメ」による取り組みが成功モデルと見なされ,注目されているのか。答えは,それが多額の投資を必要とせず,地元のモノやヒトといった地域にあるものを安上がりに活用している点に求められる。

また,そこからは,地域活性化に求められる 2つのヒント①地域資源が活かされていること,もとより地域に根付いているものであるため,基本的に初期費用を必要としないからである。それゆえ事業をはじめるハードルが低く,仮に失敗に終わったとしても、元に戻るだけであっても大きなダメージを伴わない。しかも,長年地域に根付いてきた地域資源であれば,当然のことながら地域の経済,文化,環境などと両立してきた歴史があるのであり,その持続可能性の高さはお墨付きである。②複数のセクターにまたがる連携が行われていることを読み取ることが可能である。

地域資源を活用する取り組みが,地域と地域資源を蝕むものになれば,それは自己否定に他ならない。自己否定に陥ることなく,地域の持続可能性を守るためには,身の丈を意識することが大切であることを佐用の事例は物語っている。一方で,多くの地域ではその身の丈自体を維持することが困難になっている。そうであるとすれば,道は両者の中間にしかない。

関満博は日本社会が成熟期に到達しているとしたうえで,今後の社会が従来型の発展のタイルではなく,成熟した大人の国として,どのような方向を向くべきかが問われている

として,B 級グルメの取り組みについてこう述べている。「大きな産業になることを願うことだけではなく,地域に暮らす人々が『豊かさ』を感じることが何よりだと思われる。

 今回は私達が関わる後川が源流に抱かれた自然豊かな地で、豊富な農作物が実る地であるからこそ、その豊かな「食」を後川周知の起爆剤になるのではないかと考えた。そして、後川と言えば○○と言ってもらえるような魅力を、後川自身の人達が見つけられるきっかけを提示できるよう貢献していきたい。

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