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執筆者の写真agritanogyo

2020.9 日本語論文

久塚智明(2018). "[総説] 南国の資源価値を活かした新たな食の価値の創出について.", 南方資 源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical resources technologists, 33(1): 7-13

【要約】 食の価値を感じるのは生活者であり、消費者である。そこには論理性も大切だが、感性的 にも理解できる価値の存在が要求される。以前は消費する人々という事で「消費者」という 表現が専らであったが、今では、生活を営む人々ということで、単に消費する人ではなく、 より良い生活を送りたいとする人々を対象に「生活者」という表記や発想が重要視されてい る。より良い生活を営む上で食物は大切であり、その価値は極めて重要な位置づけである。 この様な視点から南国の食の価値を見ていくと、今の時代にこそ必要な要素を見て取れる。 南国の各地には、昔ながらの価値のある食物や一次産品がある。特に、紫外線の強い地域で は、抗酸化機能を有した植物も多々存在する。科学の発展と共に、その価値が形式知化され、 今の時代に必要とされる食物の新たな科学的価値が再認識されてきている。 他方、少子高 齢化を迎えている日本において、地方の人口減少や限界集落という言葉を耳にする事も多 くなってきているが、インバウンドによる海外からの訪日客は年々増加している。訪日客の 多くはリピーターとなり、京都、富士山、東京・浅草に代表 される鉄板観光地に飽き足ら ず、徐々に地方の体験型観光を楽しむようにもなってきている。これらの地域における日常 食の対応も重要だが、新しい付加価値を生み出す上でお土産市場の非日常食も重要となる。 更には、トライアルユーザーとしてのお土産の購入者や、そのお土産を贈り物として頂いた 方々が初めて口にする美味しさが有れば、リピーターとなって新たな顧客として通販での 顧客ともなってくれるであろう。商品の購入方法も時代と共に変化する中、新たなビジネス 形態も生まれてきており、中小零細企業でも十分な利益率を上げている事例が多々あるの も事実である。その様な具体的事例を幾つか紹介しながら、そこに内在する普遍性を見出し ていく事が本稿の目的となっている。

【感想】 本研究の中で印象に残ったのは、鹿児島の壺で作る黒酢の坂元醸造さんの事例である。こ れまで丹波篠山市後川地区で活動してきた私にとっての課題は「数多くある優れた農産物 をいかにして発信するか」であった。若者が普段手に取らないような食材たちをどのように 販売するのか、優れているのは確かだがどのように発信していくことが重要なのかなかな か難しい。しかしこの事例の中で以下の様なまとめがあった。 ① 誰も否定できない地方ならではの絶対的な地域価値、歴史や伝統といった価値の活用 ② ロマンを感じさせるストーリー性 ③ 自然、天然価値、更には疫学的なサイエンティ フィックエビデンスの活用 ④ その価値を国の制度(本場の本物、GI)の中で 認証を取得し、広く情報発信する ⑤ 食品素材の価値を活かした商品のバラエティー化 ⑥ 実店舗と通販の仕組みを持つ ⑦ 守るべき伝統を守り、生活者視点で変えるべき点を革新する ⑧ 常に顧客を大切にし、顧客に発信力を持たせる このように、ストーリーを作り上げることや、科学的に証明するなど方法は様々であり、私 たちにできることは多くあるように感じた。後川も伝統や古き良き文化、自然など素敵な特 徴が多くあるためそれを活かし、相乗効果で発信していくことがいいのではないかと改め て気づかされた。

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