日本の農業の実態とこれからの課題
平井 隆一
【要旨】
今日、世界的な規模で農業問題が起こっている。農業問題が各国経済の混乱や国際的な経済 摩擦の原因になっているのが現代経済の大きな特徴である。アメリカも EU などもときには深 刻な農産物過剰に悩み、その補助金付輸出が泥沼の穀物戦争と過大な税務負担を引き起こして いる。かたや多くの途上国は爆発的な人口増加の中で食料不足に直面し、飢えに悩まされてい る。
また日本の農業の「将来」に対してのイメージ、それを考えて順風満帆だと答える人はほと んどいないだろう。日本は消費大国ではあるものの、その食糧確保はわずか、30%弱の「穀物 自給率」1や 40%程度という「供給熱量自給率」2の現状に示されるように輸入農産物に支え られた「食糧消費大国」であり、世界最大の食糧輸入国である。そして農業の現状は、「主食用 穀物自給率さえも 60%を下回る供給力しかなく」、また農地利用率の減少、生産者の高齢化と 後継者不足等の問題を抱えている。しかし、日本の農業のこれからの展望をどこに見出したら よいのか、それを実現するためにはこれからの農業政策はいかにあるべきか、という点になる と大多数の人が納得できるような明確な方向が打ち出されていないのが現状である。その大き な理由のひとつとしてわが国の農業がこれからの日本の経済・社会に対してどのような役割を 果たすのかについてはっきりした「共通意識」がないということが挙げられるだろう。という問いかけから、
本論文では、
そんな自動車やIT産業の陰に隠れた存在になっている「農業」というものにスポットを当てて 日本の農業の問題点やこれからの方向性に着目している。
地域農業組織が主体的に
大規模経営に取り組むことでまだまだコストカットも可能であるし、知識・技術高度集約型農業を目指し、高品質で安全な農産物をできるだけ安いコストで供給していけばまだまだ日本の国際競争力は高まる可能性が十分にあるとして、
日本の農業の品質向上、地域の連携に解決策の糸口を見出している。
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