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執筆者の写真agritanogyo

2021.5 日本語論文

日本における有機農業の展開と地域農業振興

宮 地 忠 幸

【要 旨 】

本研究は,日本における有機農業の展開実態を明らかに しなが ら,有機農業を地域農業振興として位置づけていく上での課題につ いて考察することを目的とした.日本の有機農業は, 「産消提携]による社会運動として始まっ たが, 1980年代を境に, 多様な流通主体が関わりをもつ ようになっ た.それに伴い ,農林水産省は,有機農業振興で はなく有機農産物の表示規制を強化して きた.現在の 日本で は,主に北海遣 東北地方,関東地方,九州地方におい て,国の 「エ コ フ ァーマ ー制度」や都道府県の認証制度を活用し た取り組みが普及 してきてい る.しか し,経営 りス クが大 きい 一方で,その リス クを補槇する販路の確保が難しい .ま た,表示認証制度が複雑化しており,消費者の有機農産物へ の理解が必ずしも充分ではない.それゆえ,有機農業の展開 は「点」的存在であり,「面」的な拡がりにはなっ ていない.有機農業を地域農業振興に位置づけていくためには,経営 リス クを低減する技術開発や新た な支援政策の 実施が不可欠で ある.「有機農業推進法」や 環境直接支払制度な どの 新制 度に期待した い .また , それを支える消費者の 農業, 食材に対する関心, 評価の あり方が 問われて い る。

近年の 農業・農村がもつ 多面的機能へ の注目は, グローバ ル な市場競争下における日本農業の存立基盤の 一つ として位置づ けられてい る.この ような施策 課題のなかで注目されるのが, 環境負荷低減を目 指した農業および農法であり, 環境保全型の農業 は 今 日 の 日 本 農 業 の 一 つ あ り 方 と し て 方 向 づ け られつつ在る.有機農業を推進していく上で,

【要点まとめ】

経営リス クとそれを補嗔する価格形成の 難し さ , 多 様 化 し て い る 「制 度 」 間 の 整 合 性 の 問 題, 経営効果を実現するための栽培技術に関する問題, 消費者へ の情報提示のあり方の闖題, を指摘している.生産者にとっ ては経営リスクの軽減とそれを実現するための 新たな栽培技術の導 入,経営リスクを補槇する価格形成の実現, 優位 販売を実現するための 認証制度の 活用を含めた商 品化のあり方に注目が集まるこ とになる.また, 有機農業を地域農業振興の 手段として位置づ ける ためには, 有機農業に異なる価値観で取り組む多 様な担い 手の間で,有機農業の理念や意義, 経営 効果の あり方につ い て意見調整してい くことが必 要である,さらに, 有機農業の取り組みが普及することで, 消費者が求める「安全・安心」な農産 物の 供給と国が指摘する環境負荷低減による自然 循環機能の維持増進や地域資源の保全管理が可能 であるとすれば, 上記の 四点に代表される諸問題

を克服する新たな方策が必要である


農業班として、国内外関わらず、農業テーマを扱う中で、

勇気農業というテーマを

今回は取り上げましたが、

それぞれの切り取る角度によって浮き上がる問題点が異なることに、面白さを感じるところです。これからも、農業をキーワードに知識の世界を広げていきたいと思います。

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